スターバックスやマクドナルドがプラスチック製ストローの使用を禁止し、今、世界的に注目を集めている「海洋ゴミ問題」。
特に、プラスチックが小さな粒状となって海中をただよい、生態系にも影響を与える「マイクロプラスチック」が深刻な問題となっています。
海の広大さを考えると、解決がとても難しく思える「海洋ゴミ問題」。
しかし!その解決に向けて、様々な個人や団体が立ち上がっています。
中には希望が持てるような画期的な技術も…!
そんな世界の最先端の取り組みをご紹介します!
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Contents
海洋ゴミ問題とは何か?
まずは海洋ゴミ問題のおさらいから。
私たちが砂浜に行くと、流木や海藻から始まり、ペットボトルやビン・カン、プラスチックのひも、鉄くず、果てはタイヤなどなど、実にさまざまなものが打ち上げられているのを目にすると思います。
このうち人工物は海岸周辺で捨てられたり、川から流入したものが多いですが、よく見ると外国語のラベルが貼ってあるペットボトルもあったりします。
外国で海に捨てられたごみが、長い年月海中に漂い、一部は海底に沈んだり、そうでないものは海中に漂いながら、はるばる日本の海岸にまで流れ着くのです。
そして、そうした世界中の海に漂うごみの量は、膨大な量にのぼると考えられています。
海に捨てられるプラスチックごみの量は、多くの国の経済発展に伴って増加の一途をたどっており、2015年には年間800万トンものプラスチックごみが海に投機され、このペースが続けば、2050年には海中のプラスチックごみの量が魚の重さを超える、という推計が発表され、世界が衝撃を受けました(World Economic Forum)。
また、外国製のペットボトルが流れつくことが示すように、海に国境線はありませんから、海洋ごみは国境を超えて世界中に散らばっていきます。
つまり、海洋ごみは一つの国が取り組むだけでは解決しません。
世界が一体となって取り組まなければいけない国際問題なのです。
マイクロプラスチック
さて、プラスチックは海中に長い間漂っているうちに、太陽の光により徐々に分解されて段々と細かい断片になり、非常に細かい破片の状態で海中を漂っています。
これを「マイクロプラスチック」と呼びます。
プラスチックは極めて丈夫な構造をしており、自然分解されるまで数百年から数千年かかると言われています。
ただでさえ時間がかかる自然分解が、海中では起こりにくい環境となるため、さらに寿命がのびることになります。
一方で、プラスチックは海中をただよっている間に、紫外線にあたったり、波にもまれたりして、ゆっくり風化し、微細化していきます。
プラスチックは細かくなっていきますが、自然分解はしないため、非常に微細な状態で海中にただよったり、海底に沈んだりして残り続けます。
これを海の生き物たちが体内に取り込むことで、生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されているのです。
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世界の動き
こうした背景から、最近、マイクロプラスチックの問題の解決に取り組む動きが世界的に活発化してきています。
2016年の秋、アメリカ・カリフォルニア州は、全米で初めて、ビニール袋を禁止することを決定しました。他にも、中国やケニア、バングラデシュ、マケドニアなど多くの国がビニール袋を禁止しています(Study.com)。
フランスでは、2020年1月からプラスチック製の使い捨て容器の使用が禁止されることになっています(Independent)。これは世界初の試みです。
企業単位での動きも出てきました。
代表的なのは米スターバックス社のストロー禁止。また、米マクドナルド社は、イギリスとアイルランドのレストランで2018年9月から、プラスチック製のストローを紙製のものに置き換える予定です(BBC news)。
こうした動きの影響もあり、プラスチックストローの使用や販売等を禁止する動きが、民間企業やチェーン店などでも急速に広がりを見せている状況になっているのです。
海洋ゴミ問題の解決に挑む技術たち
とても難しい問題のように思える海洋ゴミ問題。
しかし、大きな道も一歩から。誰かが何かを始めなければ、何も変わりません。
ここでは最新技術を活用して海洋ごみ問題に立ち向かう取り組みをいくつかご紹介します。
超巨大!海に浮かべた柵
最初にご紹介するのは、海に浮かんで漂うごみを、海上に設置した長大なV字型の柵で回収する、というもの。
オランダ人のBoyan Slat(ボイアン・スラット)氏は、ある日、プラスチックは水に浮くという基本的な性質に目をつけます。
調べてみると、海洋ごみのうちプラスチックは海面から水深3メートルまでの間に集中していることを発見し、海面に柵を浮かべることで、効率よくプラスチックごみを回収できるのでは、と考えました。
そこで、風と潮の流れを利用して、柵の内側にプラスチックごみを集め、太陽光発電で回収装置を動かす、という仕組みを考案しました。
百聞は一見に如かず。こんな仕組みです。
「The Ocean Cleanup」と名付けられ、オランダ政府も支援するこのプロジェクト、2020年の実用化を目指して実証実験が進められています。
船と網で回収する従来の方法と比べて33分の1のコストと7900倍の効率でごみを回収できるとのこと。
気になる海の魚は柵の下を通るので無害。ナイスですね!
成功すれば、10年間で太平洋に漂う海洋プラスチックごみの実に42%を削減できるそうです。
今後のゆくえに注目大ですね!
海のゴミ箱??
次にご紹介するのは「海に設置するゴミ箱」です。
は?何それ?と言うなかれ。
この動画を見れば、「おお~すげ~!」と唸るはず。
オーストラリアのヨットマンが開発したのは、ズバリ、海のゴミ箱「The Seabin」。
海に沈めると、自動で海に浮かぶゴミをどんどん吸い取っていくのです。
水面から数センチの海中に沈め、動力で海水ごとゴミを吸い込んでいく仕組み。
直径2ミリ以上のマイクロプラスチックや、水上に漂う油、汚染物質等も浄化する能力があります。
The Seabinの底ではろ過フィルターで海水を浄化し、ゴミだけ残して海水は外部に排出します。
その吸引力は小動物を吸い込まない程度に計算されているため、生態系に与える影響も心配はありません。
溜まったゴミは人力で回収する必要がありますが、それでも一つひとつゴミを回収することに比べればはるかに効率は良し。
もちろん広大な海に対して、1個の掃除能力では限界があります。
しかし、複数個を設置すれば、一つの港湾くらいはキレイに保つ力があるでしょう。
すでに世界中で7000個以上売れたということです。
日本のヨットハーバーでもこのSeabinを見かける日もそう遠くないかもしれないですね!
ごみをどんどん食べる装置?!
最後にご紹介するのは、見た目が何ともかわいくてユーモラスな奴。
でも侮るなかれ!その着想と能力には目をみはるものがあります。
まずはこちらの動画をご覧ください。
これは河口に設置されたゴミろ過機「Mr. Trash Wheel」。
まん丸のお目めが印象的なこの装置、米国メリーランド州のボルティモアで開発されました。
川の水流と浮きロープを使ってベルトコンベアを動かし、プラスチックや他のごみを熊手ですくい上げ、ごみ箱に回収する装置です。
浮きロープが張られているので、川を流れるごみはすべてこの水車に向かって流れていき、水車を通ってから海に流れる仕組みとなっています。
2008年に最初に行われたテストでは、3ヶ月で約58トンものごみを回収したというから、その性能は文句なし。
海洋ゴミの大半は陸から川を通じて海に流出したものと言われていますので、発生源から問題を断つという発想は、極めて理にかなっています。
しかし、それよりもこの外見!
何とも愛らしく、人目につくではありませんか!
そう、「人目につく」というところが大事です。
道を行く人たちはこの装置がゴミを回収している様子を日常的に目にすることで、いかに多くのゴミが川に投棄されているかに気付くからです。
人々に環境問題の気づきを与えるという点で、このプロジェクトはとても有意義なものであると思います。
まとめ
いかがでしたか?
海洋ごみの問題と、それに立ち向かう最新技術の数々をご紹介しました。
人智を結集すれば、地球規模の課題も解決できる、そんな希望を捨てないことが大事だ、と改めて思わされました。
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